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図書情報/日本子ども家庭総合研究所図書室所蔵の図書から、ピックアップしてご紹介します

ノーフォールト

ノーフォールト表紙 ノーフォールト

岡井 崇 著

早川書房
2007年4月

価格(税込):1,680円

436p. 20cm

ISBN:978-4-15-208808-6
【帯より】
無過失(ノーフォールト)補償制度とは?
 現在の日本では、医療事故が発生した場合、医師・病院に過失を認めさせないかぎり、患者はまったく補償が受けられない。このことが医療訴訟を増加させ、患者と医師の間の信頼を損なっている。過失がなくとも、患者や遺族に補償を与えるのが“無過失補償制度”である。医療事故の被害者を裁判なしに補償するこの制度は、ヨーロッパなど社会制度の進んだ国では早くから導入されている。日本でも導入に向けての検討が進められつつあるが、患者と医師双方によってより良い制度となるかは予断を許さない。

上村 一(恩賜財団母子愛育会会長)

岡井崇「ノーフォールト」の精読をお薦めします

 晩春の連休前に朝日新聞の広告でこの本を見たとき、これはぜひ読まなくてはと心に決めて、たまたま「こどもの日」に仕事で札幌に出かける羽田空港の本屋で目に留めて、飛行機の中で読み始めました。迫力のある筆致で、ことに手術の場面などに臨場感がすさまじく、フロントカバーの帯「現役医師が描く『医療の危機』困難に立ち向かう医師たちの感動のドラマ」の文字には誇張がありません。それは著者の経歴から当然のことです。

 岡井崇さんは東京大学医学部助教授から愛育病院の副院長においでになり、平成12年3月に昭和大学医学部産婦人科主任教授就任のため辞任されるまで3年余りの間、愛育病院の産婦人科部門の整備と運営の先頭に立って全力をもって当たられました。今日、愛育病院が総合周産期母子医療センターとして高い評価を受けているのは、その20年を越える産科医として蓄積された知恵と経験と将来への洞察を凝集して、その整備に大きな執念を持って当たられた、それが花を開いたもので、それを目のあたりにした私には、この小説の場面場面が、当時の岡井さんの姿と重なってくるのです。

 話は、城南大学という岡井さんの今の職場に似せた大学の、若い産科医柊奈智が当直した秋の夜に始まります。グレードAの帝王切開という難しい手術にいくつかの偶然が影響して、奈智が遭遇する苦境を、読むものに感動を与えながら、小説を書くのは初めてとは思えない切れ味のよい筆の運びで進んでゆきます。医学的で社会的なその苦難と結末を紹介するのはこの種の小説では慎まなければなりません、読者自身にお願いをいたします。

 私が申したいのはこういうことです。いくつかの例では、医師であり大学教授である人が、この種の小説を執筆するとき本名ではなくペンネームを用いることが多いのに、岡井崇という世間周知の実名で小説を書かれたのはなぜだろうかということです。この小説は当然フィクションですが、その背景には多くのノンフィクションが存在して、現在わが国の産婦人科医療の世界が当面する危機の原因になっていることです。その事情を世に訴えたい、産婦人科医療に関係する人以外は知らなさ過ぎるという焦り、そういう気持ちがあることは確かです。あとがきにそれが明らかです。私は冷静な秀才の岡井さんの血の熱さを知って正直胸を打たれました。この小説の反響は出始めています。参議院議員でこれまた秀才の升添要一さんが産科医療の構造的な改革を政策とするよう最近新聞紙上で強調していました。私は今日わが国の医療が危機だと主張される背景には、供給側に低医療費政策が、需要側に保険の一部負担増加の施策があると考えますが、産科部門に限っていうと、産科を目指す医師が減少していること、それはその仕事がとくに過激で、その上医療事故の訴訟に被告とされることが多く宿命的でありさえすることです。この小説の題「ノーフォールト」は産科部門で医療事故があったとき、これを訴訟で解決するため医師の過失を問うことをやめて、過失でなくても患者や遺族の補償をする制度を設けることの主張です。

 小説の中の須佐見教授は『結婚も医療も契約はいけない』というご意見、岡井さんも同じ気持ちのようですが、これは契約といえば売買に代表される商行為と同意義に捉えられているのではないかと思います。法律の考えでは医療は同じ契約でも売買とは違い、委任の規定が適用される契約で、医師との診療契約や弁護士との訴訟の委託など専門職にある行為を任せる場合に適用されます。この本に登場する弁護士が本当に委任を受けたものかどうかは怪しいのですがそれはそれとして、医療訴訟は契約債務の不履行か、不法行為かを主張して争われます。医療における過失を問うことを止めることは、一面から見ると、産科医療と因果関係にある患者の死亡なり障害の発生の補償を、債務の不履行とか過失とかは問わないで行うことを意味します。一方、責任論を捨象して医薬品副作用の救済制度のように論理構成することも考えられます。補償なり救済の財源は拠出の保険制度で充当することになるのでしょうが、難しい議論を克服して被害を受けた人にもその医療を担当した人にも気持ちのいい制度を一日も早く実現して欲しいものです。その理解を得るためにも多くの方々にこの小説を読んで頂きたいと期待いたします。

図書情報/日本子ども家庭総合研究所図書室所蔵の図書から、ピックアップしてご紹介します

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TEXTBOOK女性心身医学

[TEXTBOOK女性心身医学]表紙
TEXTBOOK女性心身医学

編集:日本女性心身医学会
編集責任:玉田 太朗(医療法人仁寿会理事 自治医科大学名誉教授)
編集責任:本庄 英雄(京都府立医科大学附属病院長・教授)

永井書店
B5版
発行年2006年7月
本体価格:8,400円
ISBN4-8159-1760-4
【目次】

総論1:女性と心身医学

総論2:心身医学総論

各論1:産婦人科編

各論2:女性の心身医学とそれを取り巻く環境

宮原 忍(日本子ども家庭総合研究所客員研究員)

女性のこころとからだ

 仕事のストレスから胃潰瘍が生ずるのは、現在では常識だが、医学界で常識になったのは、さほど古いことではない。ストレス学説を提唱して名を上げた、ハンス・セリエが来日し、その講義を聴いたのは、筆者の学生時代であった。その後、1974年に日本心身医学会の前身、日本産婦人科心身医学研究会が発足し、現在では、会員数600人を数えるという。

 このたび日本心身医学会の総力を挙げて、「Textbook女性心身医学」が発刊された。

 総論は1と2にわけられ、総論1「女性と心身医学」では、「女性の心身医学とは何か」、「Psychosomatic obstetrics and gynecology in the West」、「日本における女性心身医学の歴史」の3章が含まれる。第2章の著者、M.Stauberは、ミュンヘンの心身医学産婦人科教授で、フロイトから始めて、欧米の女性心身医学の歴史を簡潔に要約している。

 総論2「心身医学総論」では、17の章にわたって、心身医学一般を、概念、歴史、診断法、治療法の順に概説している。従来の産婦人科の教科書では扱わない領域なので、入門の手がかりとして、便利であろう。

 各論も1と2からなり、各論1は産婦人科編で、1「女性のライフステージと心身症」、2「母性と心身一如性」、3「中高年女性とうつ」、4「女性ホルモンと脳機能」の総論的な章に始まり、産婦人科でよく遭遇する疾患と健康問題が、狭義の心身症にとどまらず、広い範囲で取り上げられる。各論2では、「女性の心身医学とそれを取り巻く環境」として、広い範囲の問題が論ぜられ、目を開かれる思いをする部分も多い。

 従来の臨床医学が見過ごしてきた盲点を突いた好著であり、心身医学が一つの専門分野であると共に、むしろ臨床医学の基礎として、必須の部分であることを示すものといえよう。
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現場に生きる子ども支援・家族支援―ケースアプローチの実際と活用

「現場に生きる子ども支援・家族支援」表紙
現場に生きる子ども支援・家族支援
―ケースアプローチの実際と活用

小木曽 宏 編
生活書院
259p
2007年1月発行

ISBN:978-4-903690-03-2
本体価格:2,000円
【目次】

第1章 家族援助の方法と実際(1)事例「誘拐されたリカちゃんのママ」―階段のない二世帯住宅のナゾ
第2章 家族援助の方法と実際(2)ステップファミリー研究―「離婚」「再婚」ケースの支援と施設職員の役割
第3章 家族援助の方法と実際(3)「被虐待」と「非行」問題の世代間連鎖
第4章 「不登校・引きこもり事例」と世代間連鎖
第5章 子ども虐待問題のパラダイム変換―ドメスティック・バイオレンスと子ども虐待問題に対する新たな支援の可能性
第6章 子ども虐待防止活動の新たな時代―地域で取り組む予防・発見・自立とは

根本 顕(日本子ども家庭総合研究所研修生/神奈川県保健福祉部子ども家庭課)

 最近は児童福祉の分野とりわけ児童相談所のことをテーマにすると、とかく虐待一辺倒になりがちであるが、本書では虐待事例にとどまらず、ステップファミリーや不登校・引きこもり、非行などの事例を通して、子どもの「問題行動」から見えてきたさまざまな「諸相」に向かい合うこと、寄り添っていくことの大切さを示し、「関わること」「支援すること」の意味について論じている。そして児童相談所が今まで大切な役割として担ってきた家族への支援や家族間の関係調整など、いわゆる相談所として果たしてきた機能について、具体的なアセスメントや支援の実際を、経過を追いながらていねいに紹介している。また後半では、自立支援までを視野に入れた新たな社会的養護システムを構築していく必要性について、著者が力を入れている自立援助ホームの話題を交えて提唱している。
 
 ケースワークにおける見立ての重要さを、見立てることは援助の幅を広げることにつながると、多角的アプローチの視点で説明し、ケースに対する最初のスタンスを「推理小説を読む読者の心境」にたとえて「犯人は誰かということよりも、表面的に見えている現象の奥にある真相とは何なのか、そこを探りあてることがケースワークの真髄」と表現している。
 
 著者が児童自立施設や児童相談所など実践現場での経験に基づいて作り上げたいくつかの事例は、どれもが深刻な問題を内包しており、実践の経験がない方にしてみればたじろいでしまうようなケースが多いが、児童福祉の現場を知る方であれば、自分が関わったケースの一つ二つはすぐに思い浮かべることができるだろう(他機関との連携の難しさなども含めて)。
 困難なケースであるがゆえに援助の展開を追いながら読み進めていっても、問題がすっきりと解決して“めでたしめでたし”とはいかない。それでも事例を読み終えるたびに、少々の疲労感とともに充足感を持つのは、日々の実践現場で感じることができる“ケースと気持ちを通わすことができたと”いう感覚に似たものだろうか。あるいは、自分が関わったケースが知らず知らずと重なり合ってきて、援助者である自分がその時に感じていた疲弊感や無力感、そしてちょっとした達成感など、諸々の感情が押し寄せてくるせいなのかもしれない。
 
 児童虐待防止法が施行されて以来、児童相談所は虐待の対応に明け暮れるようになった。子どもの安全確保は最優先なので、そのためには保護者の意向に逆らってでも強権的に介入していくのだ、という側面に焦点が当てられることが多い。その児童虐待防止法も2回目の改正の時期を迎え、子どもを守るための権限や機能がさらに児童相談所に集中し、責任はますます重大になっていく。必然的にリスクマネジメントの観点が重視されることになるのだろうが、このような状況だからこそ虐待をしてしまった親に対しても、虐待を受けた子どもにも、ともに悩みながら寄り添っていくという著者の姿勢がなによりも大切なのだと思う。
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