[愛育ねっと(子ども家庭福祉情報提供事業)]日本子ども家庭総合研究所
トピックス
2004年11月
50周年記念全国里親大会
(村山 水穂子/NPO法人里親子支援のアン基金プロジェクト副理事長)
平成16年10月10日(10時から16時30分)、東京国際フォーラムBホールにて「第五十回全国里親大会」が開催され、好評のうちに閉会した。特に今年のハイライトは2つあった。1つは、全国の里親家庭にいる子ども達から作文を募り、優秀作品の表彰、本人による作文朗読発表があった。育てる里親たちと育てられる子ども達が一緒に参加する初めての大会となった。もう1つは、午後からのシンポジウムで儀式的でなかったこと、体験発表した3人ともが飾らずに素の自分を出して語っていたことがとても良かった、話の途中で何度も泣いてしまったなどの声が寄せられた。里親達の日頃の思いを代表して話してくれたことに対しうれしく思った。またこのことを誰かに伝えたいという気持ちが皆の笑顔にあふれていた。
3人のシンポジストはアン基金プロジェクトの杵淵理事、活動に積極的に協力している金川氏、全国里子会を支援するなかで交流を深めていった岩渕くんだったため、内情を知っている者としては、与えられた時間はとても短く感じられ、残念に思った。制限時間を超えて話した杵淵氏は、司会が進行を急ぐ中で、専門里親を重視して研修をしているが、私達一般里親にも同じような研修が必要である、レスパイト制度にしても緊急を要する場合には煩雑な手続きがあって即活用には至っていないという実情を訴えた。学者、研究者がもっと里親の近くにいてほしいとも要望した。こうした意見には会場から共感を示す大きな拍手が何回もわき起こって、熱気に満ちた展開となった。最後に語った岩渕くんは残り少ない時間のために話をはしょってしまい、的確に理解されなかった箇所もあったと聞く。そこで後日談も添えてみたい。
杵淵氏の話の中で、里子が20才になった時に実名を杵淵に変更したというくだりでは、翌日、養子にしたのかという問い合わせがあったが、これは杵淵宅とは別の戸籍で杵淵と改姓した独立したものである。金川氏が、社会から預かった子どもには、児童相談所、里親、学校の先生、病院の先生などが対等に協力し合って育てていくのが本当ではないか、と訴えていたが、この子どもは里親と対等の立場であることを表明している。
また杵淵氏は、シンポジウムのテーマ「里親制度を飛躍的に発展させるために」に沿った話題や展開が少なかったことを残念に感じており、児童相談所の働きについて、職員がもっと里親を重用して、協力と支援を行ってくれなければ里親は増えない、机の前に座っているだけでは里親は来ないとの意見だった。
岩渕くんの発言では、里親から受けた折檻などに関して、虐待ではないかという声が出たと聞いた。時間切れのために、事後の詳しい経過やそのことによって礼儀などを覚え、現在の自分があるなどの述懐が割愛されてしまっていると思う。
ちょうど会場を抜け出して、里子会の控室に寄った時のことをここに紹介する。スピーカーから金川氏の「今から思えば、子どもにしたことは虐待ではなかったかと思う。」という言葉を聞きとめた子ども達は、自分もたたかれた、つねられたということから発展して、学校の先生に黒板消しを投げられた、サッカーの練習中に鼻骨を折られた、柔道の練習と言いながらいじめに近い感じで思い切り投げつけられたなど、話が盛り上がっていった。だけど自分は負けなかったという武勇伝や、そういう時の護身術などを披露し合っていた。彼らの会話から気づいたことは、成長していく過程で里親から受けた行為は、1日の大半を過ごす学校や課外で受けた思い出の中に含まれており、その比重は2,3割に過ぎないのではないかと思った。子ども達は沢山の人々との出会いや出来事などを経験しながら大人になっていく。里親だけが子どもを育てているのではない。そのことに気づけば、里親は随分気持ちが軽くなると思う。さらに、里親との様々なことがあっても、それを成長とともに自分の精神力や知恵で乗り越えていく、子ども自身の強さが何よりまぶしいほどである。里親と暮らした日々に限定して語った岩渕くんの言葉の後には、沢山のうれしい良い思い出も詰まっていることを理解してほしい。それは、舞台上の彼の明るく爽やかな表情と姿がなによりそのことを証明している。
私は現役里親だった頃、会報の編集長としてこの全国大会に10年近く出席してきた。今回15年ぶりに見聞する機会を得たが、大会の内容がどんなに充実して良かったとしても、そのあとの行政の対応に手応えが感じられない思いを持っている。現在、当プロジェクトから発行する里親体験集の編集者として、再び里親に取材し、現場の声を直接耳にするようになって、いまだに里親に対するケアの薄さが続いていることに心を痛めている。
里子が起こす問題や暴走行為に歯止めをかけるべく、里親が対応している日々は、修羅場といった形容も大げさではない。大会に参加した方々はそれぞれに背負った自分の思いに重ねて、ある場面では泣き、ある場面では笑うといった共感の中におり、そこには里親同士のいたわりを込めた姿が浮かぶ反面、行政の姿は全然見えてこない。
何故未だに里親が苦労しているのか、何故里親の声が取り上げられないのか、何故里親が増えないのか。全国里親大会50回という半世紀に及んで開催されてきた意味を問いたい。でなければ、大型台風直撃の東京に、全身ずぶ濡れになりながらも、朝の4時に岡山を発ってきたという里親を含め、全国各地から交通費、宿泊費、参加費を負担して駆けつけた多くの里親たちの苦労が報われない。
「里親制度を飛躍的に発展させるために」というテーマを掲げるなら、もっと社会に踏み込む姿勢を持ち、市民意識を高める努力を行政や関係者が推進し、里親を強く支援する必要がある。
第五十回全国里親大会 期 日 平成16年10月10日(10時から16時30分) 会 場 東京国際フォーラム Bホール(東京都千代田区丸の内三丁目5番1号) 主催者 厚生労働省、東京都、財団法人全国里親会、特定非営利活動法人東京養育家庭の会、社会福祉法人東京都社会福祉協議会、社会福祉法人NHK厚生文化事業団、 社会福祉法人テレビ朝日福祉文化事業団、財団法人資生堂社会福祉事業財団 後 援 社会福祉法人全国社会福祉協議会、財団法人日本社会福祉弘済会、特別区長会、東京都市長会、東京都市長会、東京都町村会、東京都民生児童委員連合会、社会福祉法人東京都共同募金会、財団法人東京都善意銀行、全国児童相談所長会、東京都社会福祉協議会児童部会、東京都社会福祉協議会乳児部会、特定非営利活動法人アン基金プロジェクト